バセドウ病(Graves’ disease)
バセドウ病は自己免疫疾患であり、体が自分の組織に対する抗体を産生する病気です。この抗体により、甲状腺は甲状腺ホルモンを作りすぎてしまいます。動悸、体重減少、手の震えなどの症状が出現します。診断のために血液検査や放射性物質を用いた画像検査を行い、治療としては抗甲状腺薬の内服、放射性ヨード、または甲状腺を切除する手術を行います1)。
由来
病名は報告者に由来しており、英語圏ではグレーブス病と呼ばれますが、ドイツ医学を取り入れた日本ではバセドウ病と呼ばれます。グレーブスの方が5年早く報告しています。ちなみに2人の報告はネットで読むことができます。(「London Medical and Surgical Journal」、「Wochenschrift für die gesammte Heilkunde」)
メカニズム
甲状腺細胞は甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)自己抗体によって刺激され、甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニン(T3)とサイロキシン(T4)を分泌し、臨床症状を引き起こします。
自己抗体は、T細胞によって制御された局所のB細胞と形質細胞によって産生され、肝臓に由来するインスリン様成長因子1(IGF1)によって補助される。T細胞は抗原提示細胞(APC)上のTSHRペプチドによって活性化されます2)。
症状
バセドウはドイツのメルゼブルグで診療を行っており、バセドウ病患者の特徴として眼球突出・頻脈・甲状腺腫を報告しました。メルゼブルグで見つけた3徴であることから後にメルゼブルグの3徴と呼ばれるようになりました。
身体所見
検査
甲状腺エコー
上記の図はバセドウ病に典型的な、甲状腺腫大の例です。ドップラー超音波検査による甲状腺葉(左葉(cとe)と右葉(aとd))の画像で、バセドウ病の甲状腺の血管を示すカラー表示の有無と、中央部(b)に太い峡部(矢印で示す)がはっきり見えます。
甲状腺シンチグラフィ
様々な甲状腺機能亢進症における甲状腺シンチグラフィーの画像の例です2)。
a:バセドウ病における典型的な所見であり、両側性の肥大した甲状腺における同位体のびまん性で強い集積が含まれます。
b:無痛性甲状腺炎による破壊性甲状腺中毒症の1例であり、甲状腺は描出されません。
c:中毒性腺腫の例であり、自律的に機能している結節はアイソトープを蓄積します。結節からの過剰な甲状腺ホルモン産生により甲状腺刺激ホルモンが抑制されているため、甲状腺外組織での取り込みは観察されません。
d:中毒性多結節性甲状腺腫の場合、アイソトープが甲状腺全体のいくつかの結節領域に集中しています。
参考文献
1)JAMA patient page. Hyperthyroidism. JAMA. 2011 Jul 20;306(3):330.←JAMAの患者向けページ。
2)Graves’ disease. Nat Rev Dis Primers 6, 52 (2020).←Nature Reviews Disease Primersのレビュー。
3)Graves’ Disease. N Engl J Med. 2016 Oct 20;375(16):1552-1565. ←NEJMのレビュー
レビュー
Graves’ Disease. N Engl J Med. 2016 Oct 20;375(16):1552-1565. ←NEJMのレビュー