腎結石
腎結石は、腎臓に形成されるミネラルと塩分の沈着物であり、主成分はカルシウムであることが多いです。大きな腎結石は尿管に詰まることがあります。典型的な症候性腎結石では、体の片側の脇腹や背中の激しい痛みが突然起こり、尿に血が混じる、排尿時に痛む、排尿回数が増える、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。非造影腹部CTスキャンで、結石の大きさと位置に関する情報を得ることができます。直径10mm以下であれば自然排石されますが、直径10mm以上の症候性腎結石の患者さんには外科的治療が推奨されます。
メカニズム
腎結石の発生メカニズムとして2つの説が提唱されています2)。
固定粒子メカニズム(a)では、結石は間質中のリン酸カルシウム(CaP)の沈着から始まり、腎乳頭表面まで成長してシュウ酸カルシウム(CaOx)の沈着の核となり、ランダルプラーク(Randall’s plugs)として知られるCaOx結石の形成に至ります。
遊離粒子メカニズム(b)では、結晶が腎尿細管で形成され、尿とともに移動し、凝集して末端の集合管を塞ぎます。腎盂で尿にさらされCaOx結晶がCaPに沈着すると、CaOx結石が形成されます。
症状
腎疝痛の主な基礎メカニズムは尿管閉塞です。このような閉塞は、近位および遠位の管腔内圧力の直接的な上昇を伴い、その結果、管腔内の神経終末の伸張を引き起こします。閉塞による痛みは関連痛を引き起こすため、結石の存在部位のある程度の区別が可能です3)。
診断
腎結石を診断するためのスコアリングとしてSTONE score5)が有名ですが、修正版のmodified STONE score4)が存在します。カットオフ値は10点であり、感度0.81、特異度0.89でありSTONE scoreより優れた精度を持ちます6)。10点以上で腎結石の可能性が高いと判断できます。
治療
体外衝撃波結石破砕術(ESWL : extracorporeal shock wave lithotripsy )
体外衝撃波結石破砕術は、エネルギーのパルスを体内に伝達して衝撃波を発生させる腎結石および尿管結石に対する非侵襲的治療介入です。衝撃波は、結石による音響密度の急激な変化に到達するまで、体液と組織(体液とほぼ同じ密度を有する)を通って妨げられることなく伝達されます。衝撃波を単一の焦点に集中させることにより、石が位置する部位にエネルギーを集中させます7)。
予防
腎結石の再発を予防するために、尿量が2.0~2.5L/日以上になるよう十分な水分摂取が推奨されています8)。尿流量を増加させるために水分を多く摂取すると、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸の過飽和度が低下するため、腎結石形成のリスクが低下します9)。
参考文献
1)Management of Kidney Stones in 2020. JAMA. 2020 May 19;323(19):1961-1962. ←JAMAの患者向けページ。
2)Kidney stones. Nat Rev Dis Primers 2, 16008 (2016).←Nature Reviews Disease Primersのレビュー。
3)Clinical presentation. Clinic Rev Bone Miner Metab 2, 209–216 (2004). ←結石による疼痛のレビュー。
4)External validation of the STONE score and derivation of the modified STONE score. Am J Emerg Med. 2016 Aug;34(8):1567-72.←modified STONE scoreの最初の報告。
6)Evaluation of the patients with flank pain in the emergency department by modified STONE score. Am J Emerg Med. 2021 Sep;47:158-163.←modified STONE scoreの検証。
7)Shock-wave lithotripsy for renal calculi. N Engl J Med. 2012 Jul 5;367(1):50-7.←ESWLのレビュー。破砕術の衝撃波の発生方法の違いを図説。
9)Treatment effect, adherence, and safety of high fluid intake for the prevention of incident and recurrent kidney stones: a systematic review and meta-analysis. J Nephrol. 2016 Apr;29(2):211-219.←水分の摂取量が多い人では腎結石の発生リスクが有意に低下することを示した系統的レビューとメタアナリシス。