逆流性食道炎
逆流性食道炎は、下部食道括約筋がきちんと閉じないことで起こります。そのため、食べ物や逆流した酸が食道に逆流し、炎症を起こします。治療法としては、食事療法や生活習慣の改善、制酸剤、手術などがあります1)。
メカニズム
胃食道逆流症患者における症状の発生と食道粘膜傷害の発生にはいくつかのメカニズムが関与している可能性があります。これらのメカニズムには中枢神経系、食道、胃が関与しており、これらは互いに影響しています2)。
誘因・増悪因子
食事
多くの研究では、高脂肪、揚げ物、酸味・辛味のある食品・製品、オレンジ・グレープフルーツジュース、トマト製品、チョコレート、コーヒー・紅茶、炭酸飲料、アルコールが症状の誘因であるとしています3)。
症状
ほとんどの患者から報告される典型的な症状は、胸焼けと胃酸逆流です。胸やけは胸骨後方に灼熱感を自覚します。一般に食後30~60分後に起こり、特に大食や脂肪や酸の多い食物を多く含む食事の後に起こります。他の臨床症状を示すこともあり、最も頻度の高い非典型的症状は、呼吸器症状(咳嗽、喘息)、耳鼻咽喉科的障害(副鼻腔炎、咽頭炎)、口腔障害(歯牙侵食、口内炎、口臭)です。
症状の重症度
逆流性食道炎の重症度は症状の程度と頻度で分類されます4)。
診断
明確な診断基準はありません。
問診によるスコアリング
逆流性食道炎を正確に診断することは時に難しく、さまざまな問診票が考案されています5)。よく知られているものとしてGerdQがあります。8点以上をカットオフとした場合のGerdQのGERD診断に対する感度は65%、特異度は71%であり、消化器内科医による診断と同程度でした6)。
検査
治療
PPIとH2ブロッカー
PPIは、H2ブロッカーと比較して、有意に早く、また治癒率が高いと報告されています7)。
PPI
胃食道逆流症の症状軽減と治癒率には利用可能なPPI間でほとんど差がないことが示唆されています8)。
参考文献
1)JAMA patient page. Gastroesophageal reflux disease. JAMA. 2014 Jun 18;311(23):2452. ←JAMAの患者向けページ。
2)Gastro-oesophageal reflux disease. Nat Rev Dis Primers 7, 55 (2021).←Nature Reviews Disease Primersのレビュー。
3)Risk factors for gastroesophageal reflux disease symptoms related to lifestyle and diet. Rocz Panstw Zakl Hig. 2021;72(1):21-28.←食生活の危険因子のレビュー。
Diagnosis and management of gastroesophageal reflux disease. Arq Bras Cir Dig. 2014 Jul-Sep;27(3):210-5.←ブラジルでのレビュー。ブラジル人の罹患率は12%。
4)The prevalence of gastroesophageal reflux disease and its association with various risk factors in a tertiary care centre in West Bengal February 2021International Journal of Research in Medical Sciences 9(3):780←GERDの有病率と様々な危険因子との関連を調査した論文。
5)Systematic review: questionnaires for assessment of gastroesophageal reflux disease. Dis Esophagus. 2015 Feb-Mar;28(2):105-20.←GERD評価の問診票のレビュー。診断以外に症状、治療への反応、QOLを評価する問診票も存在する。
6)Development of the GerdQ, a tool for the diagnosis and management of gastro-oesophageal reflux disease in primary care. Aliment Pharmacol Ther. 2009 Nov 15;30(10):1030-8. ←診断ツールであるGerdQに関する論文。
7)Head-to-head comparison of H2-receptor antagonists and proton pump inhibitors in the treatment of erosive esophagitis: a meta-analysis. World J Gastroenterol. 2005 Jul 14;11(26):4067-77.←PPIとH2ブロッカーの有効性の比較。重症なほどH2ブロッカーの効果は低い。
8)ACG Clinical Guideline for the Diagnosis and Management of Gastroesophageal Reflux Disease. Am J Gastroenterol. 2022 Jan 1;117(1):27-56.←米国消化器病学会のガイドライン。PPIの有害事象に関しても言及。
レビュー
Gastroesophageal Reflux Disease: A Review. JAMA. 2020 Dec 22;324(24):2536-2547. ←JAMAのレビュー
Gastroesophageal Reflux Disease. N Engl J Med. 2022 Sep 29;387(13):1207-1216.←NEJMのレビュー